
第四日目:ブハラ Buxoro
(サマルカンド→ブハラ)
・アフロスィヨプ
ついにサマルカンドを後にし「聖なるブハラ」へ出発。サマルカンド・ブハラ間はウズベキスタンの高速鉄道、アフロスィヨプ号に乗車。スペイン製の新型車両での運行である、ブハラまではおよそ二時間。
車窓はひたすらに沙漠である、クズルクム(赤砂)という名が示すように、赤茶けているように見えないこともない。クズルクム沙漠の南にはカラクム(黒砂)沙漠があるのだが、そこの砂は黒いのだろうか? (同じ論理でいえば紅海は赤く、黄海は黄色くなければならない)
サマルカンド駅で電車を待っていると、隣に座ったウズベク人のおじいさんが話しかけてきた。知らない(おそらく外国人であることは見ればわかるであろう)人にさも親しげに話しかけるのは「トルコ」人の特徴であるとしても、こちらがトルコ語を知らなかったらどうしていたのだろう?
ともかくそのおじいさんとどこから来たのかなど雑談、イスタンブルから来たというと「イスタンブルには海があるんだろう?」との返答。これから何度も「海(デンギズ)があるんだよね」という言葉と出会うことになる。車窓を見れば中央アジアの「トルコ」人にとって海が特別なものであろうことは想像できる。
・ラグマン
アイキャッチに写っているのはラグマンというウズベク料理、ラグマンのgはしばしば長母音化(-になる)する。つまるところラーメンという料理である。想像できるように、華北の料理である拉麺の中央アジア版である(もしくは中央アジアか遊牧民の料理であったラグマンが華北に行って拉麺になった、という推測も成り立つであろう。自分にはどちらかはわからない)。
端的に言えば、ミートソースのスパゲッティを太麺にして脂っこくし、上に玉子焼きをのせたというもの。肉が少し入っていたのだが、なんの肉かはわからなかった。論理的にいって豚肉はないであろうし、鶏肉ではない印象であったのだから、牛か羊であろう。どちらかはわからない、値段的には牛のほうが半歩リードといったところか?
驚きだったのは玉子焼き、イスタンブルのロカンタ(食堂)で卵が見える形で入っている料理はあまり見なかった、と思う。トルコ料理は乳製品をやたら使うものの、卵はそんなにない、気がする。ずっと気になっていたが、何故だろう? 遊牧していれば鶏を飼うのは難しそうではあるので、卵が少ないのはわかるようであるが、トマト(アメリカ大陸原産、大航海時代に旧大陸に入ってくる)をじゃんじゃん使っておきながら、卵を使わないというのも変な話である。
ともかく、ここで久しぶりなまともな料理を食べることに成功した。時刻はすでに五時、じりじりと焼かれながらかきこんだラグマンで、油が体のすみずみにまで充填された。
永島 育
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